こんにちは、下剋上コンサルのパン太(@consultant_jin)です。
コンサルティングファームで働いている経験や書籍の情報をもとに、マーケティングについての基礎をお話します。
また、コンサルへの就職・転職を考えている皆様に向けて、コンサルの仕事をイメージしていただけるように、私の働いている某コンサルファームでのマーケティング戦略を具体的に記載していきますので、参考にしていただければと思います。
↑こちらの記事が本記事の前編となっているため、読んでいない方はまずお読みいただけますと幸いです。
マーケティングにとっての重要要素③ 差別化について
差別化を考えるにあたって忘れてはいけないこと
まず初めに、「差別化」を考える上で忘れてはいけないことをお伝えしていきます。
「差別化」を一言でいうと、「競合との、お客様にとっての価値の差」になります。
重要なのは、あくまで「価値の差」であり、性能、機能、品質などの差ではない、ということです。
たとえば、デジタルカメラの解像度が1千万から2千万画素になったとします。
この場合、画素数という性能は2倍になっているのですが、一般のカメラユーザにとっての価値が2倍になっているわけではないのです。
というのも、一般のカメラユーザにとって2千万画素で撮影する機会が考えにくく、ファイルサイズが大きくなることで、かえって使いにくくなることが想定されるためです。
このように、商品を売る側の立場では、ついつい、顧客にとっての価値というのを忘れて、自分たちが良い性能・機能・品質を追求してしまいがちになるのです。
差別化を検討するときに、「競合との」という観点が重要な理由
次に差別化を考えるときに、「競合との」という観点が重要になる理由を考えます。
例として、マクドナルドの差別化を考えてみましょう。
マクドナルドの「差別化」というと、皆様は何を想像しますでしょうか。
最初に思い浮かぶのは、「早い・安い」ということではないでしょうか。
この回答は、マクドナルドの競合がモスバーガーと考えると確かに当てはまるといえそうです。
しかし、一方で、牛丼の松屋と比較したときには、いかがでしょうか。
一概に、マクドナルドの方が「早い・安い」とは言えないのではないでしょうか。
この場合は、例えば、「ゆっくりできる」ことが差別化になると考えられます。
このように、
競合が誰かによって「差別化」の内容は変化する
のです。
したがって、「差別化」を考えるときに、「具体的な競合は誰なのか?」を確認する作業が必要になるのです。
それでは、ここまでで「差別化」を考える上で忘れてはいけないことをお話しました。
続いて、「差別化」の具体的な方法をお伝えします。
「差別化」の具体的な方法
「差別化」は、どの業界においても基本的に以下の3つのどれかに当てはまります。
①密着軸
・顧客の個別ニーズに合った気の利いた対応
・顧客の顔を覚えてリピーターになってもらい、なじみ客に何度も来ていただく
・お客様の個別ニーズを引きだす営業部門に優秀な人材を配置し、顧客の意見を代表する営業部門が力を持つ
・エンジニアの仕事は「お客様の好み通りにつくること」。お客様の目的や使い方を詳しく聞き、個別ニーズに合ったものを作る
②商品軸
・高品質勝負。味はもちろん、店の雰囲気や内装なども含めたトータルな高品質が売り物
・競合より高品質、新技術を用いて差別化
・高単価で富裕層を狙い、客数はあきらめる
・エンジニアの意向が重視され、エンジニアが力を持つ
③手軽軸
・競合より、早い、安い、便利
・駅の近くにあって便利で、単価が低く、たくさんの人が来ないと困る
・一般客狙いで、客単価を下げて客数を増やす
・低価格で提供するための効率性を重視し、規模の経済が効く大量生産を志向
・店ならチェーン化し、薄利多売のビジネスモデルを取ることが多い
それでは、この「差別化」をコンサルに当てはめて考えてみましょう。
コンサルファームにおける「差別化」の具体例
私の働いているコンサルファームは、①密着軸と②商品軸のミックスになっています。
競合となるのは、他のコンサルファームが中心で、それ以外にはシステムエンジニアや広告代理店が当てはまります。
コンサルティングという仕事は、ざっくりいうと、
「優秀である」というイメージでブランディングされたコンサルタント(=商品軸)が、顧客に寄り添い(=密着軸)、お客様のニーズにあった付加価値を提供していき(=密着軸)ながら、目が飛び出るような高価格を請求し(=商品軸)するものになります。
私の会社では、お客様に寄り添い、一緒に汗をかきながら悩み抜き、戦略策定だけでなく実行支援までも責任をもって「最後までやり抜く」ということが文化となっており、これが密着軸の観点での「差別化」として会社内で共有されるようになっています。
一方で、商品軸の観点での価値としては、高学歴の学生のみを採用し、世界トップスクールでのMBA取得制度を用意したり、書籍の執筆・講演の機会を社員に積極的に与えるなど、商品(=コンサルタント)のブランド価値を高める施策を打ち出しています。
そして、顧客には、他社と比べても圧倒的に高い金額を請求します。(車でいうとベンツのイメージ)
そして、上司からは「君たちは死ぬほど高い金額を顧客に請求している。その金額に見合うだけの価値を出さなければ、すぐに競合に仕事を奪われてしまう。高いお金をもらっている分以上の価値を出すことを意識して仕事に取り組め」ということを徹底的に叩き込まれるようになっています。
これが、コンサルという仕事の「差別化」の軸になります。
これまでに「価値」や「ターゲット」、「差別化」といったお話をしてきました。
これらのコンセプトを具体的な施策に落とし込むための考え方である「マーケティングの4P」についてお話したいと思います。
マーケティングにとっての重要要素④ マーケティングの4Pについて
マーケティングの4Pは非常に有名で、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
以下の4つの文字の頭文字をとって4Pと呼びます。
マーケティングの4P
①Product:商品・サービス
⇒これを通じて顧客に価値がもたらされる
②Promotion:広告・販促
⇒商品・サービスの価値を顧客に伝える
③Place:販路・チャネル
⇒顧客に価値を届ける経路
④Price:価格
⇒会社に価値の対価がもたらされる
これまでに「価値」や「ターゲット」、「差別化」という概念を説明してきましたが、これを4Pの観点で具体的に考えてみましょう。
マーケティングの4PをPCメーカに当てはめた場合
例として、PCメーカに当てはめて考えてみましょう。
商品軸のApple、手軽軸のDellで比較してみます。
【Apple】
顧客ターゲット:デザインに強い拘りがある人。周りにカッコよく・オシャレに見られたい人
①Product:Mac book。シンプルなデザインを売りにしており、パッケージ(包装箱)に至るまで入念にデザインされている
②Promotion:先進的な尖ったメッセージを広告やウェブサイトで訴求。海外ではMacユーザはスマートで洗練されてカッコよく、Windowsユーザはダサいというイメージ戦略を展開
③Place:店の選定に気を使っており、値引き系の販売は行わない。Apple storeも作り、そこで魅力を十分に伝える
④Price:14万8000円~という高価格
【Dell】
顧客ターゲット:低価格を重視する個人や法人
①Product:安く調達できる汎用品を大量仕入れし、汎用性の高いパソコンを売る
②Promotion:新聞や雑誌に大量の広告を出稿し、大量販売する
③Place:コスト効率が高く、全国津々浦々で買えるネット販売
④Price: 低価格
このように、商品がPCであっても戦略が異なってくるのです。
次に、私の会社のコンサルティングにて、4Pを考えてみます。
筆者所属のコンサルティングファームにおけるマーケティングの4P
【弊社のコンサルティング】
顧客ターゲット:困りごとを抱えている大企業の社員
①Product:人。困りごとを解決できる専門知識、リーダシップ、頭の良さ、人柄、外見
②Promotion:リピート、顧客内の口コミ、CIO向けセミナー、書籍発行、駅のパネル
③Place:可能な限り顧客オフィス。離れているときは、遠隔チャネル(メール、電話、Skype)にてタイムリーに対応
④Price:目が飛び出るほど高い価格
私の会社では、③,④は固定値として与えられることが多いです。
特に,④の目が飛び出るほど高い価格が固定となるため、①のProductで価格に見合うだけの価値を認めてもらう必要があるのです。
そのうえで、②の観点で、顧客にリピートや良い口コミをもらえるように一生懸命仕事に取り組むことはもちろん、飲み会やゴルフ等で親しくなることで、人間として好きになってもらい、仕事を頼んでもらえるようになること。
そして、セミナーや書籍の執筆により、各人の認知度やブランド価値の向上に努めていくといった形になります。
ここまでがマーケティングの4Pの説明となります。
最後に、ここまでの記事を書くにあたって参考にさせていただいた文献のご紹介をいたします。
参考文献:新人OL、つぶれかけの会社をまかされる
最後にもう一度だけ参考書籍を記載しておきます。
この本のメリットとしては、ライトノベル形式になっており、2時間程度で簡単に読み終えられることが挙げられます。
表紙を見る限りは、一見、美少女アニメ好きで、お母さんが買ってくれたチェックシャツとリュックサックを背負って大学に通っているヲタク系理系大学院生がターゲットのように思えますが、実際には極めて実用的で多くのビジネスマンの役に立つ内容となっております。
私はコンサルという職業柄、これまでに様々なマーケティング本を読んできましたが、この本はその中でもぶっちぎりでベストと自信を持って言い切れる内容です。
本書は元ボストンコンサルティンググループに在籍していた方から、戦略コンサルティングファームのケース面接対策としてオススメ頂いた本だったのですが、コンサル志望の方に限らず、全てのビジネスマンにオススメします。
以上となります。